数回に分けて記事にさせて頂いてきましたがいよいよ今回のテーマについてはこのpartが最後となります。
前回のpartではダイヤモンドの輝きや美しさの良し悪しを4Cだけでは判断するのは危険だという事についてお話しさせて頂きました。
ダイヤモンドの輝きや美しさは4Cの要素を含めた様々な要素が相まって個の輝きを放っています。
ダイヤモンドの本質的な美しさとは何でしょうか。
それは結局のところどれだけ綺麗に輝いているかどうかです。
一度4Cについて忘れて頂いて、ある二つのダイヤモンドを比べてときにどちらが美しいかをどう判断するのかについて私どもの考えを述べさせていただきます。
ダイヤモンドの美しさとはいかに透明度が高いかどうかこれに付きます。
まずはどの石が最も透明度が高いかを見て頂くと良いです。
例えば、透明なガラスコップに透明な水を注いだ状態でそのコップを横から覗くと限りなく透明に見えるのはイメージできるかと思います。
次に透明なガラスコップにラップをぐるりと巻いた状態で透明な水を注いで、同じようにコップを横から覗くと当然ですがラップを巻いた分さっきより透明度は落ちるように感じられるかと思います。
別で牛乳を飲んだ後のガラスコップにそのまま透明な水を注いだ状態でそのコップを横から覗くとどうでしょうか?
恐らく全体的に白く濁っているのではないでしょうか。
このような状態に似た現象がダイヤモンドを含め多くの宝石において起こり得ます。
本当に美しいダイヤモンドは無色透明なのです。
白くはないのです。
私どもではダイヤを遠目で見て白く見えたり、灰色がかっていたりするものは「詰まり石」と呼んでおり例え4Cの評価が高くてもそれらを仕入れることはありません。
ダイヤモンドにおいて、その石がいかに透明であるかどうかは美しさの違いに大きく左右される要因であるのです。
そして、輝きです。
その石がどれだけ輝いているかどうかです。
ここで勘違いされやすいのはラウンドブリリアントのようにカット面が多い多面体カットが施された石はその表面の反射により石を通常より輝かせる効果があります。
そのために生み出された理想のカットですので当然と言えば当然ですが、
ここで私どもの述べている輝きとはただカット面に反射している光の輝きだけでなく、
中から浮き上がってくる輝きや、石の周りにまで浮かび上がる輝き(スパーク)がどれだけ高いかどうかです。
「透明度」と「輝き」のこの二つがいかに高水準であるかが、ダイヤを見た時の美しさに直結していると言えます。
私どもの「透明度」と「輝き」とはまさにあらゆる要素が相まってあらわれているそのダイヤが放つ「透明度」と「輝き」のことです。
ダイヤモンドに光が当たると一部はカット面に反射されます。
それがカット面の輝きです。
そして残りの光はダイヤ内部を通過して行きます。
そして石を通り抜ける光もあれば、内部で屈折していく光もあります。
光を透過する際にダイヤモンドの内部や外部は様々な光を受けて輝きを放ちます。
ですので内部のインクルージョン(内包物)によっても輝きに影響を受けますし、
カットのクオリティが低いと屈折率によりその輝きに悪い影響が出てしまいます。
特にインクルージョンによる内部の光の透過度の影響は中から浮き上がってくる光の輝きに大きく影響するのです。
ここまで読んで頂けましたらやはり
カット
カラー
クラリティ
の評価が高ければいいんじゃないですかという事になります。
もちろん色がほぼ無色である「D」カラーで
クラリティもほぼインクルージョンのない「IF]
カットもExcellentでしたら恐れくとても美しいダイヤであることはほぼ間違いないでしょう。
ですが多少インクルージョンのあるVSクラスやSIクラスではどうでしょうか。
一見するとVSクラスの方がSIクラスよりインクルージョンが少ないはずなので恐らく同じカラーグレードとカットクオリティなら金額を無視すればだれもが4Cの評価に沿って、VSクラスを選ぼうとさせるのではないでしょうか?
ですがここで注意して頂きたいのはクラリティの評価とはその石がどの程度の割合でインクルージョンなどの特徴を内包しているかの評価です。
ですのでVSクラスの方がSIクラスよりはインクルージョン等の内包物や特徴が少ない分
美しいはずなのですが実はインクルージョンというのは前回も少し触れましたが様々な種類の物がございます。
光の透過に大きく影響するものや色を濁らせて見せてしまうの、そもそも石を白く見せる原因となっているもの、あるだけで避けたくなるもの、
はたまた実は比較的輝きや美しさに大きく影響を与えないものなど
つまり割合が低くても内部にあるだけであまり良くないインクルージョンや
顕微鏡で見れば少し多く内包していても肉眼で見た輝きにあまり影響のないものもあるという訳です。
そうしますとインクルージョンの内容によってはSIクラスのほうがVSクラスより肉眼では美しく見えるケースもあるのでございます。
ジュエリーですので常に顕微鏡で見て内包物が少ないことが重要なのでは無く、
いかに身に着けて美しいか、眺めて美しいかの方が重要な場合が多いはずです。
カラーの評価においてもその評価をつけるのは人です。
仮に「E」カラーの評価の石があったとしてその「E」カラーには
限りなく「D」に近い「E」もあれば、
限りなく「F」に近い「E」もあります。
そしてダイヤは天然の物ですので色はもちろん均一であることの方が少ないのです。
少なからず色ムラがあるのですがそのさじ加減は非常に難しく、単純にマスターストーン通りにピッタリ色味が合うかと言えば必ずしもそうなる訳ではありません。
つまりは同じ「D」カラーでも微妙な差はあるのです。
残念なことに一度鑑定をとったダイヤを別の所で再度鑑定すると違った結果がでたということは意外に起こり得るのです。
特に現在はより厳しくなっているかと思いますが、カラーグレードなどは石の一部にそのカラーグレードの部分があれば全体的にグレードの低い色味でもその一部を持って高いグレード評価をつけている場合も昔はよくありました。
人が目で鑑定する以上評価基準に差が出ることは仕方がないのですが、
4Cだけをダイヤの良し悪しで判断してしまうとそういった可能性もおこりうるのでございます。
つまりは4Cの評価も重要な良し悪しの要素ではありますがその評価はあくまでもそれぞれをある基準にそって断片的に評価したものですのでより詳細に見ていくと気を付けるべき要素が他にもあることがお分かり頂けるかと思います。
それらすべてが合わさって一つのダイヤモンドとしてそこに存在しているのです。
特に内側から浮き上がる輝きなどは様々な要因で違いが出てきますし、その良し悪しの判断にはその判断に必要な環境で見る必要があるのです。
例えば、ジュエリーショップなどでダイヤモンドなどを見る際は正直どれも同じように見えるかもしれません。
特にダイヤをルースで販売されているお店では4Cの説明は受けても正直どれも光って綺麗に見えると感じられるかもしれません。
それはもちろん通常、一般の方が数多くのダイヤモンドを見慣れている分けれも無いですし、そもそも質の良いダイヤばかりを仕入れているので輝きに大きな違いは無いんですよーと言われて納得されてしまわれたかもしれません。
ですが実は内側から上がってくる光の判断は多くのジュエリーショップではダイヤを見慣れている人でもなかなか見極めにはコツがいります。
なぜか?
ハロゲン(ライトに光り)です。
多くのジュエリーショップはハロゲン(ライト)に非常にお金をかけています。
四方八方から強力な光を商品にあてているのです。
ダイヤモンドの多くはラウンドブリリアントカットがされていて、
エンゲージリング用の石のカットのクオリティの多くはvery good 以上です。
ですので四方八方からガンガンに光を当てているのでプロポーションの良いカット面の反射光や屈折だけで十分にキラキラ石が光って見えているのでもはや微妙な違いやまして中から浮き上がる光かどうかの判断が付きにくいのです。
白い濁りがあってもある程度反射光で見えづらくなっています。
なのでお店で見た時はすごくきれいだったのにお家に持って帰ったらあまり綺麗じゃないなんてことが起こり得るのです。
逆に言えば、本当に美しい輝きをもつ石の内から浮かび上がる光とはほんの少しの光でも十分に輝きます。
寧ろ暗がりでどれくらいキラキラ光が浮き上がるか確認した方が良いくらいです。
恐らくハロゲンをガンガンに効かせた空間ではあまり違いの判らなかったダイヤモンドたちも通常の家庭の蛍光灯下で確認すると意外に違いが分かるものしれませんし、良質なものとそうでないものはダイヤを見慣れていない方でも一目瞭然になったりもします。
そう言った意味では良い石かどうかの判断をするのは中々に難しい環境にあるのかもしれません。
長々と考えを述べさせて頂きましたが、
ダイヤモンドの良し悪しを測る上で何より大切な第一歩は
良い物を実際に見てみるという事です。
実はそれが一番難しいのですが。
4Cが高い石ではありません。
本当の意味で透明度が高く、内側から輝く石です。
そういった石をいろいろな角度(暗闇や太陽光下、蛍光灯下、ハロゲン下)からみてどう違うのがインクルージョンの種類が違うだけで石の見え方がどう違うのか?
などなど良い石をいろいろな角度から見て、知ることで感覚的に覚えていくと、次第にパット見で良し悪しが分かるようになります。
その石のテリ(輝き)がどれくらいあって、
詰まっていないか(白く濁ったり、灰色ががってないか)
それを踏まえて上で自身が予想する、求めている4Cの評価と同じあるいは高ければいう事は無いのです。
逆に自分が求めている4Cより実際のテリや透明度が悪ければ本来は避けるべき石なのです。
つまり今回の記事テーマのpatr1の冒頭で本当にきれいな石について疑問思われた方が宝石の世界の入口に立たれたかもしれないというのはそういう事なのでございます。
ここで述べさせて頂いていることは一般的にとても小さな違いなのです。
ですが本当に美しい石を実際に見て、知って他と比べた時、
それほどわからなかった違いは大きな違いとして見えてきます。
もしかするとこのブログを読まれている方はそういった違和感を少し感じられている方かもしれません。
正直、石の質に大きなこだわりがなく、4Cやブランドの記号的稀少価値に重きを置かれるのであれば知らなくてもよい違いですし、知らなければ今後もほとんど知ることも触れこともない部分です。
なぜなら、残念ながらこの違いを知るにはそれを知るための環境とそもそもそのレベルの石を何度も実際に見る必要があるのです。
しかし、それは自発的に知るにはその環境を提供できる所を探さないと国内で自然に出会うことは中々に難しいのです。
これは本来、プロの方がお客様にお話しする必要のある内容だと私どもは考えておりますが、そこまで説明している所は残念ながら稀かと思います。
そもそもプロの方でも実際にジェムクオリティー(高品質)のダイヤを見たことがある人が少なくなってきていますので、そういったダイヤの存在すら知らない場合もあります。
これはあくまで私どもの考えを述べさせて頂いておりますので必ずそうしなければいけないという事ではありません。
だた、もし何か今までの経験のなかでダイヤモンドの良し悪しについて疑問に思ったことがあって知りたいことがあるといった方やあくまで一意見として参考にされたいという方様の少しでもお役に立てればと思います。
以下の内容は店主の経験談ですが実際に合った話です。
こちらについてどう思われるかは国内では賛否両論かなと思いますが、
一つの物語とでも思って読んでいただけると幸いです。
店主はルースを海外へ直接買い付けに行くことがあり、当時はその頻度も高く、ある日のことですがダイヤモンドの鉱山会社と鉱山のある現地で直接ルースの買い付けをさせて頂く機会があり、幸運にもその鉱山のオーナー様と親しくさせて頂き、直接お話しや、買付をさせて頂けることになりました。その際にその鉱山におけるダイヤモンドの衝撃的な事実を教えて頂き、新たな価値観を持つことが出来るようになりました。
店主がこの業界で独自にダイヤモンドをとり扱い始めた当初(約35年程前)は
4Cの評価を基準にダイヤのルースを仕入れておりました。
ですので、鉱山会社のオーナー様に直接ルースを買付させて頂ける際にも
店主は4Cのグレードをいくつかピックアップさせて頂き、その石を買付させて頂こうとしておりました。
その時におっしゃられたのが同じ4Cの石でもそれらがさらに数千種類に分けられるということでした。
大変衝撃的だったと聞いております。
当時は誇張してお話しされたいたのか、あるいはジョークか何かかと感じたらしく、
未だに同じグレードの4Cがさらにそれほど多くの数に分けられたとしても、
恐らく、その判別は余程の目利きができないと不可能なように感じますし、私自身分けることは不可能です。
ただ、数多くのダイヤモンドを見てきた中で確かなことは4Cの評価の低い石でも高い評価の石より美しい石はたくさん存在していることです。
確かに数千種類に分けられるのでしたら、4Cの評価の高い石の中でもさらに数千種類に分けた際下から数えた方か早い石と それより4Cの評価が低い石でも数千種類の石に分けた際には上から数えた方が早い石では恐らく後者方が美しいという事なのだと思います。
このことからもダイヤモンドの美しさを決めるのには4Cの項目以外の様々な要因が絡んでいると言えます。
より詳しくお話しするにはダイヤモンドの流通経路に関わるお話しも踏まえることになりますのでそれはまた別の機会にお話しできればと存じますが実はダイヤモンドの流通には優先順位があるのです。
ダイヤモンドは有限の天然の稀少な石ですので当然何のですが、私どもが直接鉱山のオーナーからお話しさせて頂き知ったことと日本にいる限りでは知る機会がなかったこともこの流通形態が大きな原因の一つですし、現状それは改善されるどころが悪くなる一方なのでございます。
これは非常に大きな問題でして、以前は私どももそうでしたが多くの日本の企業は中間業者から4Cの評価でダイヤを買い付けています。
そもそも日本のダイヤモンドの市場は4Cの評価で値段が決まっているので当然なのですが、仮に数千種類に分けられたうちの低い物ばかりの4Cの評価をされたダイヤが日本へ流通されていたらどうでしょうか?
同じような低いところのものからそれぞれの要望にあった4Cの評価の石をピックアップされているので比べればまさに4Cの評価通りに良し悪しが美しさや輝きにも同じように出ているかと思います。
そういった状況は逆に言えば、同じ4Cでも数千種類に分けられたうちの上位のものが日本に流通されにくくなっている可能も考えられるのです。
4Cの評価だけで石を買ってくれるなら低いランクの中での4Cの高い物を渡せばいいのでということになりかねません。
それは本当の意味で美しいく輝くダイヤモンドを得る機会やそもそも見る機会を失う危険性があり、現状国内で本当の意味で美しいダイヤモンドの数は明らかに減ってきているように思います。
綺麗過ぎて偽物なんじゃないか?
本物のダイヤってもっと白いよね?
なんてことを耳にすることがありますが
イミテーション(偽物)というのは本来本物を似せて作っていますので
本物が偽物より汚いということは残念ながら宝石ではよくあることですが、
逆に宝石において本当に質のよい本物はイミテーションでは遠く及ばないほど美しいのです。
私どもと致しましてはもしこれからダイヤモンドを含め宝石を選ぶ際により良いものを選ぶために必要だと思うことは
まずはその石のトッピン(高品質なもの)を見て知ることが大切です。
その石を様々な角度や環境下で見て、できればよくないものと比較することです。
そうすることで徐々に美しい石の本質がわかるようになります。
簡単な事ではありませんが残念なことにこれといった近道はなく、何度も見ることで感覚的につかんで頂く必要があります。
幸い美しい物を眺めるという行為はあまりストレスはありません。
寧ろ、そういった機会を得ることが国内の現状では難しいのでございます。
それぞれが一つの要素として大切なのですがそれがあればあたかも良いものという形で販売されている項目がこの業界は非常に多いです。
4Cの評価もその一つです。
何度も繰り返しになりますが大切なことはひとつひとつの要素が相まってその石の美しさや稀少性になっているのであってその一部があるからと言って高品質なわけではないのです。
その一部の要因があると良いとされる理由を知ること、
それと他の要素がどのように組み合わさっているのか、それを実際に美しく、高品質なものにそって見て、知ることで本質的な美しさを体感して頂くことが大切です。
記号の稀少性にばかりに気をとられないように気を付けてください。
なによりも実際に見て、本質的な稀少性を是非知って頂きたいです。
真に美しい石とは見ただけでその石が真に本物であることがわかるほど明らかにきれいなものです。
高品質ですよと見せられてどこが疑問に思われたり、鑑定書がほしくなるのは何かその石に違和感があるのかもしれません。
もし、実際に色々な環境下で高品質な石を見てみたいけど、そんな場所を知らないという方様や私どもの考えに少しでもご興味を持って頂けました方様で疑問に思われることやご質問などございましたら、是非、一度お問い合わせくださいませ。
私どもの一部のジェムクオリティーのダイヤモンドとすでにお持ちのダイヤを比較することで何か新しい経験をご提供できるかもしれません。
ここまで読んで頂き誠にありがとうございました。
ダイヤモンドを語る上ではここで述べさせていただいた内容もまた極一部の良し悪しという要素でしかありません。
色々な角度からダイヤモンドという石について今後も記事にしていければと思います。
なにはともあれ大切なことはダイヤモンドの良し悪しを知るためには人が定めた記号の稀少性ではかるのではなく、実際に美しく輝く原石の時点でジェムクオリティーだったダイヤモンドを見て真の輝きや透明度を体感して頂くことが始まりかと思います。